ハートブレイクブラザーズ!
11.ハートブレイク・ブラザーズ!
何かがいつもと違う!?
鼻の付け根がズキズキと痛む。
頭にもどうやらタンコブらしきものがいくつか出来てるし・・・
辺りを見回す。
見慣れない天井と壁。
しばし頭を整理する。
そして、数十秒後にようやくここが洗濯船のゲストルームだと気が付いた。
酒宴の後にこの部屋に泊めてもらったことが過去にも何度かあった。
ゆっくりとベッドから起き上がり下半身に掛かっている布団を捲る。
「なんじゃこりゃ~~~~っ!!!」
絶叫が船内に響き渡る。
「お?どうやらロウヤー君が起きたみたいですね。」
そう言うとホテルマン風の男は食堂を出ていった。
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくに一体何が起こったんだぁ~~~~っ!!」
髪を掻き毟り、部屋を挙動不審に歩き回る小野君。
「あ、おはようございます!みなさん食堂で朝食摂ってますよ。」
何事もなかったかのようにホテルマンが声をかける。
「はっ!!笹川さん!ぼ、ぼくに、僕の身に一体何が起こったんですか!?」
完全に取り乱してしまっている町の法律家。
「覚えてないんですか?」
きょとんとした表情で聞き返す笹川さん。
「・・・全く・・・。」
ほぼ放心状態の小野君。
「ま、とりあえずパンツを履いて食堂に行きましょう。」
サラリと促すホテルマン笹川さん。
「・・・パンツ・・・はっ!!僕のパンツはどこに行ったんですか!!」
慌てて布団の中を必死に探し始める。
「あ~そうか!昨夜医務室で手当てを受けた時に切り裂かれてましたね!」
突然思い出した笹川さん。
「な、なんで僕が医務室でそんな目に!?ひょっとしてコイツと何か関係が!?」
震える右指で股間を指さす。
そこには大事な部分に真っ赤なリボンがチョウチョ結びになっていた。
「だ、誰がこれを!?」
「そりゃあ、この船で医療の知識があるって言えば船長かエーコさんくらいでしょ?」
口を尖らせて『そんなの当たり前じゃないですか!』と言わんばかりのホテルマン。
「わぁ~~っ!!エーコさんに見られたんだ~~っ!!僕はもうお仕舞だ~~!!」
両手で頭を抱えながら泣き崩れる小野君。
「そんな大袈裟な。海に落ちた時にあちこち体をぶつけたんですから治療してもらっても仕方がないでしょ!」
そう言いながらさっさと部屋を片付ける。
「本当に覚えてないんですか?危なかったんですよ、あなた。」
なかば呆れ顔で訪ねる。
「・・・僕はもう・・・もう・・・グスン」
膝をつき項垂れたままベソをかく。
「さ、食事を摂れば元気も出ますよ!」
「・・・先に行っててください。・・・僕、食欲ありませんから・・・クスン」
哀れなほどに参ってしまってる正義の人、小野君。
「どうした?」
食堂に戻ってきた笹川さんに船長が尋ねる。
「どうもこうも、女性に大事な部分を見られたショックでノックアウトですよ。」
肩をすくめて見せる。
「ん?女性って、こいつのこと?」
箸でエーコを指す。
「ん?何か言いました?モグモグモグ。」
食事に集中していて何も聞いてないエーコ。
「・・・あの、それより・・・」
僕が切り出す。
みんなの食事が一斉に止まった。
一同がこっちを見てる。
「あの、前から気にはなってたんですけど・・・」
前置きをして深呼吸したのちに一気に捲し立てた。
「正式メンバーになったとか言ってますが、大体、この船って一体何をしてる船で僕はどうして、なぜ今、何の、正式なメンバーになったんですか!?」
ハァハァと呼吸が荒くなっているのが自分でも分かる。
シーンとする食堂。
次の瞬間、まるで何も聞かなかったようにみんなの食事が再開した。
ガヤガヤと話しながら食事は進む。
「え?!ちょっ、あれ~?」
完全にアウェーな空気が漂う。
そのうち食事を終えたものが一人抜け二人抜けと席を立ち始めた。
「あれ?え?あの~?」
あれよあれよと言う間に、そして誰も居なくなった。