白い恋人現る?
9. 白い恋人現る?
白い砂浜が陽光に照らされてキラキラ光っている。
波打ち際に腰を下ろし、手元の砂を一掴み。
掌からサラサラと小さな粒子がこぼれ落ちる。
つい先日までのハリケーンが嘘のように、晴れ渡った空には一片の雲さえない。
僕の左側には『理想の彼女』が座っている。
どうしてこうなったか?
そんなことはどうでもいい。
とにかく今の僕は幸せの絶頂にいる。
彼女が僕の方へ体を引き寄せ、僕にぴったりと寄り添ってくる。
見つめ合う二人。
やがてどちらからともなく顔を寄せ合う。
ツルリとした、ゆで卵を剥いたような彼女の肌が近づいてくる。
キスを予想したが頬を寄せてきた。
『焦らすのが上手い!!やっぱ、こうじゃなくっちゃな!』
昂ぶる心を抑えながらこちらも頬を寄せる。
ゾリッ!?
『ん?ゾリって?!』
ゾリゾリッ。
「痛い!イタタタッ!!」
慌てて目を開けると見知らぬ男が僕の首に手を回して頬ずりしている。
「うわ~~~っ!!!」
船中に響き渡る僕の悲鳴。
「だ、誰?!」
男は気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てている。
僕は咄嗟に自分がパンツを履いているか確認した。
『ほっ。とりあえず無事みたい・・・。てか、誰だこいつ?!』
安堵と怒りが同時に襲って来る感覚は、空腹と胸焼けが同時に起きる感覚に似ていた。
「あのちょっと!!」
恐る恐る男の肩を揺さぶる。
「う~~~ん?」
そう言ったものの薄目を開けたまま、また寝息を立てる。
右手にはしっかりと何かを握っているようだった。
指の間から白く短い毛のような物が見えている。
顔を近づけ指を一本ずつ剥がして、その正体を探ろうとした時、勢いよく部屋の扉が開いた。
「おはようございます!あ、そうそう、昨夜船長が拾った男性なんだけど、寝る場所がなかったから隣に寝させて貰いましたよ。」
まるで当たり前といった感じで五十絡みの上品な、まるでホテルの客室係のような男性が僕に話しかける。
「・・・誰??」
朝から訳がわからないことだらけでまた混乱し始めた。
「へ?あ、そうか。君覚えてないんだね、昨夜のこと。」
『昨夜って酒宴の夜??』
また目眩が始まるのが分かった。