お花畑女
3. お花畑女
そんな事を考えていたら、いつの間にか食料補給船はすぐそこまで来ていた。
しかしその大きさは想像をはるかに超えていた。
僕らの乗った船は、数倍もあろうかと思われる食料補給船からの引き波を喰らって大きく左右に揺れ始めた!
「しっかり掴まってろよ!!自分が魚の食料になっちまうぞ~!!」
船長が甲板に居る僕らに叫ぶ。
ひとしきり海水を浴びた後、ようやく揺れが止まった。
「こっの馬鹿野郎が~~~っ!!」
船長は食料補給船の船首を見上げながら怒号を発した。
少しの間が空いて、船首付近の甲板からひょっこり顔を出す人影が見えた。
「すいませ~~ん、師匠~~~!!」
若い女性の声が返ってきた!?
『ん?どこかで聞いたことがある気がする・・??』
逆光に遮られ顔がハッキリしないが、確かにどこかで聞いたことがある声。
「あっ!燗番が甲板に居る~!!」
「あっ!!あの時の女!!」
思い出した!
そうだ、あの『酒宴をこよなく愉しむ会』に居た、会話のキャッチボールが不可能な天然の『お花畑女』だ!!
確かにあの夜、この船に拾われた。
しかも甲板に引き上げられるや、有無をも言わさず甲板上で繰り広げられる『酒宴をこよなく愉しむ会』の酒の燗の番をさせられたのだった。
『でもなぜ、あいつがこんな船を?!』
「旨い酒は持ってきたんだろうなぁ?」
船長はもっぱら酒のことが気がかりのようだ。
「はい!言われたとおり『ベンテンムスメ』も持ってきましたよ~!」
満足げにニヤリとする船長。
僕らの乗っている船『洗濯船』の甲板に食料補給船『石川青果+』号から縄梯子が投げ下ろされる。
先ほどのお花畑女が器用に、スルスルと縄梯子を伝って降りてきた。
洗濯船がクルーザークラスだとしたら、石川青果号は貨物船クラスだった。
女に続いて続々と積荷が紐にくくられて降りてくるが、僕は『なぜこんな娘がこの大きな船の船長をしているんだ?』という疑問に囚われ立ち竦んでいた。
「こんにちは!ヾ(*´∀`*)ノ」
そんな僕の疑問などまるで意に介さないかのように天然色満開で近寄ってくる。
『うわっ、来るな!』
いきなり土足で人の心の中にまでドカドカ上がり込んできそうな彼女の勢いに、思わず身を仰け反ってしまった。
「大丈夫です!食べませんから!!」
やはりどこかズレている。。
「予定よりかなり遅かったが何かトラブルでもあったか?」
「はい、すいません・・・実は・・・」
さっきまでの明るさは消え、申し訳なさそうな表情を浮かべ、何をどこから説明したら良いのか迷っている風であった。
「・・・分かった。何も言うな。聞けば殺意が芽生える。」
船長の言葉に、突然ハッとしたように笑顔に戻る。
『この女、只者じゃない。もしかして宇宙人?!』
そう直感した。