和食職人なべさんの部屋
「こんばんわ~!」
「お久ぶりです!いつもお世話になってます!」
「いえいえいえ、こちらこそ!」
「あ、今日はこいつは運転手。なのでお酒は私一人で!」
「はい!じゃあ、初めは冷たい飲み物から行きましょうか?」
「そうだなあ、クーラーも効いてるしビールの小瓶か中ジョッキがあればいっかな?」
「承知しました!母ちゃん、中生一杯!」
お母ちゃんがニコニコしながらビールグラスを運んできた。
「いつもお世話になってます。」
そう言うと静かにグラスをテーブルへ置く。
流石、手慣れたもので動作に嫌みさがまるでない。
「いえいえ、こちらこそ大分のために小説では一肌脱いでもらってて、すみません。おバカな小説で恥ずかしい思いをさせてるんじゃないかとビクビクですよ。」
「そんな事ないよ~。本人も楽しそうにやってるよ。」
屈託のない笑顔でそう答えてくれるお母ちゃん。
カウンターの中では親父さんもにこやかに作業をしている。
『何だか以前来た時よりも一層家族の一体感が増してきたなあ。いいなあ、家族かぁ・・・』
しみじみと感慨に耽る私にナベちゃんがカウンター越しに料理を出してくれた。
「はぅ~~~!!旨いぃ~~!!」
「親父か!『美味しいです』くらい言えないのかよ。ったく。」
「はぅ~~~!!旨いぃ~~!!」
「お前、明らかに俺にケンカ売ってるだろ?!あ”っ!?」
「そんなことないです!ただ他の表現を知らないだけです!!」
「そこ自慢するところか!?」
「あ、ナベちゃん、次から辨天娘の熱燗ね!」
「待ってました!やっぱ夏は熱燗ですよね?」
「そりゃあそうでしょ!?」
「純米酒飲むのに熱燗を楽しまないなんて変というか酒を知らない奴くらいでしょ。」
「来た来た!お~、金魚盃かい!見た目も涼しげでいいねえ~。」
「でも熱燗なんですよね? ・・・確かに冬はコタツでアイス食べますもんね? ・・・はっ!!ひょっとして『究極の贅沢』!?」
「それでもまだ大分では知らない人の方が多くて・・・」
「くぅ~~~っ!!旨い!!」
「でも一応は教えてあげてるんでしょ?後は勝手にするさぁ。そんでもってそんなのに限って後になって『何でもっと早くこんな美味しい飲み方があるって教えてくれなかったの!!』とか言うんだよなあ。きっと。」
「くっ~~~!!うっ、う、旨、お、美味しいですっ!!」
「何とか少しは進化したようだな。」
「しかしここの料理は「美味しい」を遥かに超えて「楽しい」と言った方が正解かもしれないな。」
「あは、ありがとうございます!」
「俺も全国の美味しいものをかなり食べてきたけど、この味なら大都会なら2か月待ちは当たり前だろうなあ。」
「たはは、そうですかね?」
「はっ!くっ!たっ!う、うま、いや、お、美味しい~~!!」
「お前心臓でも悪いのか? 無理して腹いっぱい食うと体に悪いぞ。残りは俺が一人で食べてやるから、な?」
「え~~っと、誰が運転して連れて帰るんでしたっけ?え?」
「お前最近どっかの党みたいに感じ悪いよ。」
「交渉術は師匠から習いましたからね。」
「ほほぅ~~~!!うひひひ~~~!!美味し楽し過ぎます~~!!」
「ついに壊れたか。」
「はぅっ!!ヤバイ!!この玉ヤバイですぅ!!」
「このナメロウはまた、く~、酒が進む!てか料理を飲んで酒を食べてるようなバランスになってるぞ?!」
「あれ?!ヤバイ!!この南瓜の天ぷらもヤバイですぅ!!」
「やばいやばいってどっかの国の弾薬庫か!」
「甘太くんってまだ旬じゃないのにこんなに甘いんですか?!旬だったら私壊れちゃいますよ!」
「いやいや、既に壊れてるだろ?お、この梅酒は高級スモモの貴陽みたいな香り!しかも実がデカイ!」
「私も飲みたいです!」
「いやいや、君は運転があるでしょ?くわ~~~っ!!なんて素敵な味なんだ、この梅酒は~~~っ!!」
「師匠の鼻毛が一本だけ異常に長く伸びますように!!」
「鯛皮の握りは私がゲット!!」
「ふぅ~~、〆はお吸い物が沁みますね~!」
「流石にもうお腹一杯・・・なんだけどまだまだ食べたい! せめてイクラの軍艦巻きでも・・・」
「!!!!!・・・こ、これは・・・」
「宮崎産鮎の一本握りだよ。」
ニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべる親父さんでした。
「参りました! お持ち帰りで!!」
かくして夕方17時から始まった「日本料理と純米酒をこよなく愛する会」はこうして親父さんの独り勝ちで幕を下ろしたのでありました。
最初から最後まで、飽きることのない美味しいお料理と会話、本当にご馳走様でした!!
これからは毎月食べに来ますのでよろしくお願いします!!(笑)
「もしもし!?」
「うん?」
「あ、船長すいません。もうすぐ着きますんで、そろそろ始めといてください。」
「馬鹿野郎、気にすんな。それより安全運転で来いよ。」
「すいません。じゃあ、また後ほど。」
「おう。気をつけてな!」
「みなさん、もうすぐですが船長たちも待っててくれてるんで。もうちょっとお待ちを。」
「あ、大将、もうすぐ奴らが来るんでこのビール瓶片づけといて!」
「あ、共犯者の諸君、残りの連中が来る前にチャチャっとグラスを空けてくれ。」
「まずは小鉢から・・・ん?この赤い粒粒は?」
「・・・ザクロ?!と揚げと何だろ?旨い!!」
「やぁねぇ。『本物のお酒』と『美味しい肴』があれば何だっていいじゃない!」
「あべ君って、お酒が入ると必ずオネエも入るよね・・・?」
「あ、忘れてた!今日の会は全員オネエになり切ってもらうんで!」
「え~~~~っ!!」
参加者全員の声。
『てか、エーコまで何で?!』
「はっ!旨い!!このコンニャクは何!?それにこの焼肉は!!」
「お前、いや、あなた人の話聞いてた?・・の?」
「あ、船長、本気なんだ!」
こけそうになった。
「ケセランパサラン!!」
「この人は頭打って記憶が無いからこれしか言えないし・・・」
「ハイお待ち!!佐伯産のかぼすブリとサバの刺身だよ!」
キッチンなべさんの母ちゃんが元気よく刺身盛り合せを持って来た。
「肉厚に切ったカボスブリのお刺身がトロケルぅ~~~!!」
「美味しいですね!!サバが刺身で食べられるなんて!!素敵です!あ、でも僕、いや私、初登場なんで顔は載らないんですよね?」
「そっか!今日はいつものメンバーと少し違うメンツが揃ったから『顔無し』さんが多いんだわ!」
僕も徐々に美味しいお酒が回ってきたようだ。
「はい『ブリ大根』だよ。」
『母ちゃん』が配膳してくれる。
「ケセランパサラン!!」
「喜んでるわ!」
僕も徐々に美味しいお酒が回ってきたようだ。
「旨い~~~っ!!ブリがトロケル~!大根の旨みが沁みる~~~!」
『なんでコイツは男言葉なんだよ!!』
美味しいお酒を飲んでもなぜか彼女を見るとイラついてしまう。
「大将、旨い酒もジャンジャン持ってきてくれ・・ちゃいますぅ?!」
「はい!ジャンジャン飲んで食べて下さいよぉ!!」
「はい!お待ち!フォアグラ入り茶碗蒸しです!」
「旨い・・わぁ!これだけでも食べに来るわ、次回も!!絶品!!」
慣れないオネエ言葉で喜びを表現するイトウさん。
彼も初参加で『顔無し』さんだ。
「はい!お待ち!佐伯産の椎茸のサラダです!」
「肉厚の椎茸から旨み汁が出て来るぅ~~!!」
「椎茸のサラダって初めて聞いたわよ!!」
みんなかなりお酒が回ってきたようだ。
「はい!お待ち!佐伯産の魚介をふんだんに使ったお寿司です!」
「おお~~~っ!!」
この後、いい加減お酒の回った僕らがどうなったかは皆さんのご想像にお任せいたします。
最後に・・・参加者全員より。
「最高の『酒宴をこよなく愉しむ会』を有難うございました!!またやりましょう!!」
それでは皆さん、お休みなさいませ。
酔い夢を!!(笑)
リアルなべちゃんの呟き
大分県佐伯市でリアルに寿司屋の後をついで日夜頑張ってます!
以前、石川青果さんの美味しいお店紹介のコーナー「異種卵地図(イシュランマップ)」で紹介されました。詳細はこちらからご覧ください。
このページではレシピや食材の目利きなどを書いてゆこうと考えてます。